| 研究概要 |
最新のテクノロジーを利用した斬新な固体地球計測手法である精密制御震源を用いた調和波動地震トモグラフィの地下展開フェイズドアレイの性能実証研究を進めた。研究成果の概要を以下にまとめる.
(1)巨大空洞内ではGPS信号が取得できないため,市販の装置を用いての同期観測は困難であった.そこで,坑道内に光ケーブル網を設置し光リンクで結ぶことにより,同期観測が行えるシステムを構築した.さらにボアホール型の地震計を設置し,常時微動を計測し,実験サイトのノイズレベルを定量的に評価した.
(2)光ケーブル通信を介した同期観測により,既設の震源(やよい2号)の応答を遠方の観測アレイにより観測した.観測波形を解析したところ,時系列波形ではノイズに埋もれて全く信号が見えないにもかかわらず,解析によりACROSS信号が精度よく抽出できることを確認した.また,スタッキングにより,理論通りにS/N比が改善することを確認した.
(3)ACROSSの最大の目的である地盤の状態変化に伴う観測波形の変動の検出を実証するため,震源の時間安定性を評価し,また遠方の観測点にて観測波形の変化を捉える実験を行った.震源の安定性が十分に高いことは確認できたが,電源確保の問題で連続24時間しか実験できないため,明瞭な変化を検出するには至らなかった.
(4)複数の周波数成分を観測して,狭帯域で離散的な周波数応答関数を取得した.これの解析を行ったところ,P波の直達波と思われる成分を検出することに成功した.ただし,反射波やS波と思われる波成分については,精度よく検出するには至っていない.さらなるデータ取得,解析が必要である.
(5)偏心質量の1次モーメントを可変とするやよい3号を作成し,実験室にて機械的に駆動できることを確認した.これにより,AM法の可能性が開け,フェイズドアレイを効果的に運用できる手法の見通しがたった.
|
