研究概要 |
透過性材料を用いた構造物を正規の河川施設として設計・施工するために,構造物の環境水理性能と機能を技術的に評価する必要がある.近世以前に多くの透過性構造物が利用されていた実績はあるが,科学的根拠に基づいて建設されていたわけではなく,現時点でこの種の構造物に対する設計基準はない.平成12,13年度の科学研究費プロジェクトとして採択された「巨石で構築された捨石堰の環境水理機能に関する研究」(基盤研究C,研究代表者:道奥康治)では,捨石堰の環境水理設計に必要な基本特性に関する多くの知見を得ることができた.こうした先行研究を背景にして本研究では,堰のみならず護岸,落差工,水制,ワンドなど河川に設置される諸施設の透過構造化を目標とし,環境水理設計を実現するための技術的課題に取り組んだ.対象項目には流れ,流体力,河床変動などの水理特性だけではなく,構造物が水質や生態系などにおよぼす影響なども含まれ,河川管理者の協力を得て実河川での現地調査も実施された. 本研究は5名の研究担当者によって2カ年にわたり実施された.(1)研究方法として水理実験,理論解析,数値解析,現地計測,(2)研究フィールドとして実験室での河川模型から近畿地方や岡山県下の諸河川まで,(3)対象項目は流速,水位,流量など水理量の他に有機物,栄養塩,溶存酸素などの水質指標,底生昆虫や魚類など多岐にわたり,様々な手法で研究が展開された.主な成果として,洪水時における捨石堰の構造破壊条件と越流特性,捨石など透過性材料を用いた水制の水流制御と河床変動への影響評価手法,ワンドや落差工での局所流が河川疎通能や水位変動に及ぼす影響,落差工・魚道などが水生生物におよぼす環境影響などについて知見を得ることができた,今後の河川整備に対し本研究成果が少しでも貢献できれば幸いである.
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