研究概要 |
高充填性コンクリートの調合設計上の条件である流動性状と材料分離性状に関して,「フレッシュコンクリート中では,粗骨材の表面にモルタルの一部が付着しており,粗骨材と一体となって挙動している」という仮説をもとに,余剰モルタル膜厚理論,間隙比理論を適用して流動性状に関する検討を行い,さらに材料の表面に保有可能な水量を算定して材料分離に関する検討を行った.研究成果を要約すると以下のとおりである. (1)付着するモルタルの厚さ(付着モルタル膜厚)の違いは,粗骨材の粒径および高性能AE減水剤添加率によること,モルタルの付着に伴って余剰モルタル膜厚が変化することが明らかになった.また,付着するモルタルの厚さは,粗骨材粒径,AE減水剤添加率,モルタルの降伏値から推定が可能であることを示した. (2)付着モルタルを考慮し,混和剤添加量から単位水量を換算することで,組成が同じで混和剤添加量のみが異なる場合,即ち,粗骨材量とモルタル量が同じでモルタルの性状のみが異なるようなコンクリートでも余剰モルタル理論を適用した流動性状の評価がより正確に行えることを示した.さらに,骨材の間隙比とセメントペーストの量的関係から,流動性および材料分離性状について検討を行った結果,基準となる普通コンクリートの1割程度の細骨材率を増加させることが最もよいことを実験的に確認した. (3)付着モルタル膜厚の概念を粒子表面に形成する水膜に適用して,モルタルの流動性,材料分離を生じない上限の水量(最大保有水量)に関して検討を行った.結果,材料分離対策としては粉体系混和材料の添加が有効で,特にフライアッシュは流動性増大効果が大きいことを示した.
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