研究概要 |
1999年にドイツのグループが発見したスピネル型をとる立方晶窒化ケイ素は,これまで六方晶のα型とβ型の窒化ケイ素に比べて,3.5eVのバンドギャップを持つ,直接遷移型の物質であることを我々は理論計算に基づいて予測し,また超高硬度材料としても興味が持たれることを提唱してきた.硬度については,すでに我々の実験により,ダイヤモンドとcBNに次ぐ硬度をスピネル型窒化ケイ素が有することを発見している.本研究では,理論計算を系統的に行うことと平行して,衝撃庄縮法と薄膜合成法により系統的な実験を行うことを目的とした.初年度得られた結果を以下に列挙する. 1)バンド計算による量子材料設計を行った結果,立方晶窒化ケイ素を薄膜合成するためのプロセシング条件を明らかにし,半導体化させるためのドーパントを探索した.薄膜実験にも着手し,現在は予備実験段階である. 2)新規物質の高圧合成を衝撃圧縮装置を用いて行った.とくに,炭素の固溶の可能性とスピネル型サイアロンの可能性について検討した. 3)スピネル型サイアロンおよび,β型サイアロンについて,分子化学研究所UVSOR放射光施設でのAl-K端XANESの測定を行った.これまで,本研究での理論計算では,両サイアロンともに,Al-Oの優先的な結合が形成されることを予測していたが,実験Al-K端XANESの化学シフトおよびスペクトル形状は,その理論予測と定量的に一致した.
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