研究概要 |
高真空中または低圧力水素ガス中の平行平板状電極間(DC高電圧を印加,付加的に磁界,磁界と高周波電界を重畳)において,数十nmサイズの炭素超微粒子とSi超微粒子との混合超微粒子を静電的に高速衝撃・付着させることによる新しい薄膜形成法を開発し,ダイヤモンド状炭素(DLC)とSiの混合組織薄膜を作製した。2年間の研究を通じて,その混合膜の成長特性,電子構造的特性及びこれらの特生の水素プラズマエッチングによる改善法について究明し,以下の知見を得た。 (1)混合膜の形成とその直流伝導特性については,1)形成される混合膜のSi含有率は原料超微粒子のSi混合率に比例するが,その混合率には限度(20%程度)がある。2)混合膜の直流伝導経路はDLC相であり,電気抵抗率はSi含有率に依存して増加する。3)混合膜中のDLC構造は,Si含有率の増加に伴ってグラファイティックな構造へと変化する。 (2)成膜の効率化と高品質化については,1)混合膜の成長速度は,直流電界に磁界のみを重畳した場合(MS)及び磁界と高周波電界とを重畳した場合(RF-MS),直流電界だけの場合に比べていずれも増加するが,高周波電界を併用すると少し減少する。これらの結果は,水素プラズマの作用である表面清浄化による粒子付着効率の向上と,エッチングによる材料除去が膜成長過程に関与したことを示唆する。2)混合膜のホッピング電導特性は,プラズマエッチング作用が強くなる順(MS<RF-MS)に抵抗率とその温度係数が高くなる。これはダングリングボンドが減少して局在準位密度が低下したことを示しており,水素プラズマの膜成長過程に及ぼす水素プラズマの作用に関する知見と符合する。これらのことから,水素プラズマの効果によって膜質及び膜成長効率を向上させることができたが,電導特性におけるSi/C界面効果の発現は認められなかった。
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