研究概要 |
本研究は,高温エリプソメータ及びコールドクルーシブル放射率測定装置を用いて,固体・液体状態の金属及び合金の垂直分光放射率の測定を行い,放射機構に基づいて,放射率の推算式を構築することを目的として行った。以下,得られた成果を列記する。 (1)Cu,Ag,Au,Fe,Co及びNiの純金属の放射率を各金属の融点で,波長範囲500-2500nmにおいて測定し,放射率が融解にともなって増大することを明らかにするとともに,1000nm以上の波長において,それらの放射率を推算できる推算式を作成した。 (2)FZ-Si及び900ppmのSbを含有するポットスクラップSiの放射率をそれぞれの融点で,500-1000nmの波長範囲において測定した。固体Siの放射率は液体Siよりも大きく,前者は正の波長依存性,後者は負の波長依存性を示すこと,900ppm程度の不純物はSiの放射率に有意な影響を与えないことを明らかにした。また,固体Siの放射率は束縛電子モデルで,液体Siの放射率は自由電子モデルで記述できることを示した。 (3)固体及び液体Ni-Cu2元系合金の放射率を800-2000Kの温度範囲で測定した。固体,液体に関わらず,放射率の温度係数は正であり,その組成依存性は上に凸の放物線的な関数であること,さらに,液体の放射率は,負の波長依存性を示すことを明らかにした。また,自由電子モデルによる計算値が測定値の温度及び組成依存性を表現すること,これらの値の差がd電子の放射に対応し,その大きさは波長のみに依存することを示し,これらのことから,放射率を温度,組成及び波長の関数として定式化した。 (4)Ni-Co2元系固体合金の632.8nm,温度300-1600Kにおける放射率を測定した。組成によらず,放射率の温度係数はキュリー点以下では負,以上では正となることを明らかにした。 (5)Ni-Cr2元系液体合金の放射率を1600-2000Kの温度範囲で測定した。放射率の温度係数及び波長依存性は,Ni-Cu系と同様であったが,組成依存性に関しては,特に短波長域において,80at%Ni付近で極小値を取ることを明らかにした。
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