研究概要 |
現代の物質開発の現場では,光や電子,イオンなどの様々なプローブによる分光技術は不可欠な手段であり,評価・解析力が物質開発の成否を握っていると言っても過言ではない。しかし,その分光実験結果を解釈するための理論計算ツールについては,標準化からはほど遠いのが現状であり,量子材料解析法の広範な応用へのボトルネックとなっている. 本研究では,すでに確立されている DV-Xα分子軌道法をもとに,現在開発中の相対論および多電子系の計算プログラムを統合して高効率な量子材料解析システムを構築し,材料開発の現場で使える量子材料解析システムを実用化することを目的とする。本年の成果は以下のようにまとめられる. 1)DV-Xα法による1電子計算結果をもとに,相対論計算および多電子計算を同一フォーマットで行うことのできるソフトウェアを開発し,遷移金属化合物のL_<2.3>吸収端X線吸収スペクトルの網羅的な計算でプログラムの検証を行った.検討した化合物は,CaF_2,TiO_2,V_2O_3,V_2O_5,Cr_2O_3,MnO, FeO, Fe_2O_3,CoO, NiO, LiNiO_2,NiO_2などである。 2)結晶データから入力データを作るビルダーを構築し,分光スペクトルと同時に状態密度,化学結合ダイアグラムなどを標準出力させるようなルーチンを開発した.そして,これをTi化合物を中心とした各種の遷移金属化合物に適用し,化学結合状態の視覚的理解に供することができた.
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