研究概要 |
本研究では,発光層に蛍光材料を用い,低電流密度域(J<100mA/cm^2)及び高電流密度域(J>100mA/cm^2)における励起子annihilation過程について検討を行なった。本研究では,蛍光材料系の有機LED(α-NPD/Alq_3)をモデル素子として用い,(A)発光効率が緩やかに上昇していく領域(J<〜100mA/cm^2),(B)発光効率が急速に減少していく領域(J>〜100mA/cm^2)に分類し,EL発光効率(η_<ext>)低下現象の解析を行った。(A)の領域において,陰極にCs/Alを用いた場合,電流密度に対して量子効率は一定であった。一方,MgAg陰極では量子効率が電流密度と共に緩やかに上昇する現象が観測された。このように陰極金属により量子効率の電流密度依存性が大きく変化することから,キャリア注入バランスによりη_<ext>が変動するものと結論した。次に高電流密度下(J≧100mA/cm^2)での量子効率の変動であるが,デバイスのサイズにより発光効率の低下が大きく左右されることを見いだした。特に微小デバイスにおいてはSinglet-singlet annihilation (SSA), Singlet-Polaron annihilation (SPA)モデルと良好な一致が得られることがわかった。発光層中においてドーパントがキャリアをトラップする場合はSPPモデルに,発光層中でキャリアトラップ現象が生じない場合はSSAモデルによって説明できる事がわかった。また,Joule熱の影響が懸念されるデバイスサイズの大きな素子では,Singlet-heat annihilation (SHA)モデルで発光効率の低下を説明ができることがわかった。
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