研究概要 |
低温下における弱光照射が青果物の品質に及ぼす影響を,形態および生理・生態学的観点から検討を行った. 1)弱光照射した青果物は重量が減少して、その品質は低下した。この減少率は光強度が大きく、貯蔵温度が高いほど大きくなった。光照射されている青果物の表面温度は2℃程度高くなるので、蒸散が盛んになることが主に重量減少と関係していた。なお,MA包装したブロッコリーなどでは保存温度5-10℃、50-250lxの光条件下で,重量減少を3%以内に抑えることができた。 2)青果物をMA包装し,適当な温度および光条件で保存したとき,青果物では緑色の退化が小さく,食味,外観などの品質の低下が小さくなった.光を照射した青果物では,緑色部分のクロロフィル含量が増加し,葉緑体の生理活性は高く維持され,養分輸送経路の機能が維持され,老化ホルモンであるエチレンの生成が抑制され,無気呼吸による揮発成分の発生が抑制された。すなわち、光照射による品質の維持は、光照射によるクロロフィルの生成、光合成の働きによる細胞の生理活性の低下の抑制が関係していると考えられた。 3)光照射を長期間行うと、花茎内の糖含量が減少する、あるいは古葉が黄化し、新葉の緑色が濃くなるなどの現象が認められた。また,イチゴ果実では光照射によって果皮色が濃くなった。一方、MA包装したコマツナに給水処理して弱光を照射し、14℃で保存すると,萎凋せず,葉色が濃くなり,体内の硝酸態窒素濃度は約36%低下した. 4)以上の結果,緑色を有する青果物では、弱光照射(50-250lx),低温(5-10℃),高湿度(MA包装など)条件を組み合わせることにより,光合成によって緑色が維持され、老化が抑制され、品質の低下が抑制できることが明らかになった。また,光照射を利用すれば,保存期間中に鮮度を損なわずに,硝酸態窒素濃度を低下させることが可能であった.
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