研究課題
基盤研究(B)
カイコガ前部絹糸腺の予定細胞死は、昆虫ステロイドホルモンである20-ヒドロキシエクジソン(20E)により誘導される。20Eは、核内の転写調節因子として存在しヘテロ2量体で作用する核受容体(EcR・USP)に結合し転写調節を介してその作用を顕在化する。しかし、予定細胞死にあっては、核受容体を介した作用だけでは説明がつかない現象が多々あり、膜受容体或いはnongenomic作用を想定するに至った。まずは、前部絹糸腺細胞膜上でのエクジステロイド結合タンパク質の存在の証明を試みた。その結果、エクジステロイド結合因子が膜に存在し、膜埋め込み形のタンパク質であり、高い結合活性を有していることが明らかとなった。また、前部絹糸腺に20Eを作用させると1分以内にcAMPの急激な増加がある。さらに、20Eによる細胞死には、タンパク質リン酸化酵素の内のPKCが関与し、その下流にカスパーゼ3があることも明らかとなった。これらの全ての結果は、エクジステロイドの膜受容体の存在を強く示唆した。5令摂食期を終わる頃の前部絹糸腺に培養下で20Eを作用させると、細胞死を引き起こすが、その完了には140時間以上かかる。この長い時間は、細胞死の個々の要素と20Eとの関係を精細に検証することを可能とする。この系を用いて20Eと細胞死の関係を調べたところ、細胞死は、細胞膜のブレッビング、細胞収縮、DNA断片化、核凝縮、核断片化、アポトーシス小体形成の順で進行した。ブレッビングと細胞収縮及びアポトーシス小体形成は核受容体を介した20E作用のもとにあり、DNA断片化、核凝集、核断片化は核受容体を介さないnon-genomic作用により調節されていることが明らかとなった。以上の結果は、単一種のステロイドホルモンがgenomicとnon-genomic作用の両系を介して、細胞死という単一の生理応答を引き起こすという、これまでにないステロイドホルモン作用機構を提案するものである。
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