研究概要 |
水稲による有機態窒素吸収を含めた水田土壌における炭素・窒素動態の解析を行うために,^<13>Cと^<15>Nでラベルした炭素・窒素化合物用いて,3段階の実験を行った。すなわちCN動態解明のための施用化合物として,実験1は,低分子化合物の^<13>C-グルコースと^<15>N塩安,実験2は^<13>Cと^<15>Nで同時ラベルした稲わら堆肥,実験3は,^<13>Cと^<15>Nで同時ラベルした微生物菌体(細菌Bacillus subtilisと糸状菌Aspergillus nigar)を用いた。実験1では,基肥時に施用した^<13>C-グルコースのうち,根に1.8%,茎葉に0.8%,穂に0.9%が収穫時までに蓄積しており,低い量ではあるが,土壌施用炭素の取り込みが確認された。同様に^<15>N塩安の植物体への移行割合は,従来の報告と同様に根9.2%,茎葉16.2%,穂27.2%と高かった。栽培初期における^<13>C-グルコースの半減期は16日と短く,中期では210日と長くなり,グルコースは土壌微生物によって急速に代謝・吸収されるとともに,生成した二次代謝産物の分解は,かなり遅くなったことが示された。実験2では,稲わら堆肥由来炭素の吸収は,根2.23%,茎葉1.35%,穂1.16%となり,グルコース添加の場合より高くなった。実験3において,細菌由来炭素の植物への移行率は,根2.13%,茎葉7.41%,穂4.94%とさらに高くなった。糸状菌由来炭素の移行率は,根19.3%,茎葉2.61%,穂24.0%と細菌由来炭素より高くなった。このように,低分子化合物や植物体残渣よりも微生物菌体という形態で存在する炭素は,水稲による経根的吸収割合が4〜13倍程度高くなることが示され,土壌微生物は,単に土壌中において物質の分解を行い,低分子窒素化合物を植物に供給するばかりでなく,菌体自体が植物の経根的吸収の基質として,重要性が高いことが明らかとなった。
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