研究課題
基盤研究(B)
体細胞レベルでのc-kit遺伝子の突然変異は散発性のGIST(Gastrointestinal stromal tumor)を発生させ、germlineでのc-kit遺伝子突然変異は家族性多発性GISTを発生させる。これまでに傍細胞膜領域とチロシンキナーゼ領域Iでの突然変異が報告されているが、新たにチロシンキナーゼ領域IIにおける遺伝子異常を見つけたので、まずこれについて解析した。この遺伝子異常は、KITのチロシンキナーゼ活性を恒常的に活性化させるもので、機能獲得性の突然変異であることがわかった。また、他の家族性多発性GIST家系と同様に、患者にはカハールの介在細胞(Interstitial cell of Cajal ; ICC)のびまん性増殖もみられた。家族性多発性GISTに関する研究として、これらの患者に見られるICCのびまん性増殖のクロナリティーを調べ、この病変がpolyclonalな細胞から構成される過形成であることを示した。また、チロシンキナーゼ領域IIの突然変異は、選択的チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブによる抑制が不十分で、下流のシグナル伝達物質のリン酸化の抑制も弱いことを明らかにした。またGISTに関連する研究として、c-kit遺伝子に突然変異を持たないGISTの約半数に傍細胞膜領域またはチロシンキナーゼ領域IIのPDGFレセプターアルファの機能獲得性突然変異をみつけた。イマチニブは前者の突然変異を効率的に抑制し、後者の突然変異は十分に抑制しないことを示した。また、イマチニブ耐性となった再増殖GIST病巣には、原発巣にみられるc-kit遺伝子変異に加え、イマチニブ耐性の原因と考えられる新たなc-kit遺伝子の突然変異が存在することを明らかにした。さらに、von Recklinghausen病でみられる多発GISTでは、腫瘍にc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異が見られないことを示した。
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