研究概要 |
ボツリヌス神経毒素(NTX)、神経毒素-無毒成分の複合体毒素(progenitor toxin, PTX)の腸管上皮細胞からの吸収機構を解明するため、細胞への結合、侵入過程、およびその際に重要な役割を担っているタンパク質の3次構造を解析した。まず、AおよびB型NTX, PTAをラクトースゲルカラムを用いて簡単に精製する方法を開発した(現在、特許を申請中)。次いで、無毒成分の構成成分である赤血球凝集素(HA)の4個の成分(HA-1,-2,-3a,-3b)をGST融合タンパク質として作製し、毒素およびHA各成分の腸管の培養細胞.(T84,HT29)への結合性(Kd値の決定など)や、コンフォーカル顕微鏡を用いて細胞内への侵入性を解析した。NTXやHA2,HA3aは結合しない〜低いKd値であったが、HA陽性のPTXおよびHA1,HA3bは高いKd値を示した。1次構造の解析では、HA1にはリシンのB鎖と類似のβ-trefoil構造があることが、またHA3bにはシアル酸に結合する配列(CRD of Siglec family)があることが示唆されたが、細胞への結合実験からA, B型PTXは主にHA1を介してガラクトースに、C, D型PTXは主にHA3bを介してシアル酸に結合することや、結合にはHA1,HA3bのC端側が重要であることが判明した。A, C型HA1の結晶化を試みたところ、C型では成功し、かつ、その3次構造も解明でき、HA1は2個のβ-trefoil構造を持つことが確証された。C型毒素のHT29細胞への侵入性では、NTXは侵入しないが、HA陽性のPTXは4分後には侵入すること、レセプターとしては、糖脂質よりも糖タンパク質上に存在するシアル酸が重要であることが判明した。さらには、HA1、HA3bには、免疫不活化活性(アジュバント活性)があることも判明した。
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