研究課題
基盤研究(B)
低分子量Gタンパク質Rap1はLFA-1の接着性を亢進させる細胞内シグナル伝達分子であり、TCRやケモカインで活性化されることを明らかにしてきた。ケモカインによるRap1の活性化はTリンパ球の活発な遊走、LFA-1やVLA-4を介する血管内皮への接着、血管内皮通過やリンパ球細胞極性を誘導する。さらにRap1のこのような機能を伝達するエフェクター分子RAPLを同定した。RAPLはRap1-GTPに特異的に結合する、分子量約3万のタンパク質である。RAPLは脾臓、リンパ節、胸腺に多く発現し、特にリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞に発現している。RAPLはLFA-1の親和性を亢進させるとともに、リンパ球細胞極性を誘導する。ケモカイン刺激するとLFA-1とRAPLは細胞先端に速やかに移行し、両者の局在は良く一致する。RAPLは活性化Rap1の存在でLFA-1と複合体を形成し先端側にLFA-1を集積させ、接着を誘導すると考えられた。RAPL欠損マウスの解析から、ケモカインによるLFA-1/ICAM-1,VLA-4/VCA-1によるリンパ球接着が著しく低下し、細胞極性を持った形態も誘導されない。また2次リンパ組織が低形成になる。これはリンパ球ホーミングが低下していることから起こっていた。さらに胸腺からの成熟胸腺細胞の移出低下、辺縁洞B細胞減少、B細胞成熟不全、樹状細胞の減少と局所リンパ節への遊走低下があり、これらはインテグリン接着低下による細胞遊走や局在異常に基づくと考えられる。したがってRap1-RAPLが生体内において免疫系細胞移動や局在に不可欠の働きをしていることが明らかになった。
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