研究概要 |
目的:H市と近郊の地域について職場における視機能、眼圧および生活調査と予防についての労働衛生学的研究を行った。 結果:参加1709名について、眼圧は右眼12.6±2.9mmHg、左眼12.5±2.9mmHgであった。この地域では年代は70歳代(1539名)、60歳代(758名)と高齢にシフトしていた。眼圧は最低3回の受診を意図的に平均した。裸眼視力は0.24±0.20、矯正視力は訴えを有する者は0.39±0.25であった。収縮期血圧は134±22、拡張期血圧は72±12mmHgであった。p<0.001である関係(以下それぞれ順にPearsonの分布、n)は、たとえば年齢と矯正視力(-0.069**,3306)、収縮期血圧と眼圧(0.177**,3292))、屈折異常と眼圧(-0.118**,2674)などに認められた。 近視と眼圧の解析は<-20(n=8),-20≦ <-10(n=76),-10≦ <-5(n=168),-5≦ <-2(n=393),-2≦ <-1(n=249),-1≦ <1(n=890),1≦(n=890)に基づいた。男女差、屈折矯正変化、等価球面度数との関係(たとえば屈折は男-0.72±3.30,女-0,73±3.40)も解析した。その他の視覚の条件、男女差、屈折矯正変化、等価球面度数や運動との研究をおこなった。 さらに高眼圧予防として、3家系について遺伝子研究と薬理実験をおこなった。なお本研究は申請中の2件目の国際用途特許(裏面)とは全く別である。視力、視野、眼圧測定については、工場や会社で時間的迷惑をかけないシステムを準備できた。全身と眼の関係、について解析した。 予定と異なった点:当研究所だけでは労働衛生学上の視覚研究は困難なので、関東〜中国地方、米国とのネットシステムを構築した。本視覚研究に参加する研究補助員については、当研究所の方針により委託業務をおこなった。本研究は、講師と助教授を経験した2名の医師自らが現場にたちあって得られた統計であり、義務的な研究や単なる産業医の参加記録ではない。そのため、産業、職場でのストレス度、目の健康については、よせ集めではなく、同じ視点からの濃厚なデータである。 まとめと今後:作業関連感覚器疾患や生活習慣病など、臨床との兼ね合いや日内変動、季節変動、性差や職域の視機能に関する生活調査は、労働衛生学的意義が高く、未知の分野である。
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