研究課題
基盤研究(B)
細胞死はFasリガンド、TNFα、抗がん剤、放射線などからの死のシグナルが、さまざまな機序でcaspase cascadeを活性化することによりもたらされる。この活性化を調節するものがインスリンやIGF-1などからの生存シグナルである。生存シグナル伝達分子であるAktやPKAは、Bcl-2ファミリーの中でアポトーシス促進的に働くBADを燐酸化し、アポトーシス抑制的に働くBcl-2/Bcl-XLとの複合体より解離させる。その結果、Bcl-2/Bcl-XLがミトコンドリアからのチトクロームCの遊出を阻害してcaspase cascadeの活性化を抑える。ヒト肝がん組織(T)20症例での解析では、生存シグナル系であるAktやPKAの活性が非がん部(NT)に比し有意に上昇し、BADの燐酸化も増強していた。またアポトーシス最終実行分子であるcaspase 3の活性が低下しており、その活性とBAD燐酸化との間には負の相関関係が認められた。これらの結果より、ヒト肝癌組織では生存シグナルがアポトーシス抵抗性に関与している可能性が示された。そこでヒト肝がん細胞株において、PI-3 kinase阻害剤やA kinase阻害剤にて生存シグナルを抑制すると、BADの燐酸化は減弱しcaspase 3活性は上昇し、その結果、細胞数は約70%に減少した。さらに生存シグナル阻害剤との抗癌剤との併用を行うと抗癌剤の殺細胞効果が増強した。以上の結果より、生存シグナル活性化は肝がん細胞のアポトーシス抵抗性の一翼を担うことを見出した。一方、死のシグナル伝達分子であるMAPK super-familyの1つであるp38MAPKは、生存シグナルとは逆にTではNTに比して有意にその活性が低下していた。そこでMKK6の恒常的活性体を用いてp38MAPKを活性化すると、肝がん細胞株をアポトーシスに誘導しうることを明らかにした。さらに抗がん剤の添加により活性酸素が発生させると、p38MAPKの活性化を介して肝がん細胞株にアポトーシスを惹起しうることも見出した。以上の成績から、活性化した生存シグナル系と減弱したp38MAPK活性が肝がん細胞におけるアポトーシス抵抗性の一翼を担っており、これらを標的にした新たな肝がん治療法の可能性が示唆された。
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