研究課題/領域番号 |
14370315
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
腎臓内科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野入 英世 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (00301820)
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研究分担者 |
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (90311620)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
15,200千円 (直接経費: 15,200千円)
2003年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
2002年度: 11,300千円 (直接経費: 11,300千円)
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キーワード | 細胞治療 / 血管内皮細胞移植 / Thrombotic micro-angiopathy / ヒト臍帯静脈血管内皮細胞 / 虚血性急性腎不全 / 慢性間質性腎障害 / Green fluorescent protein (GFP) rat / Green fluorescent (GFP) rat / ヒト臍帯静脈欠陥内皮細胞 |
研究概要 |
末期腎不全患者に対する透析医療には、20万人の患者に対して一人当たり年間500万円の支出を行うことより、総医療費30兆円のうちの1兆円が透析医療に投入されている計算となる。2型糖尿病から維持透析への移行により、症例数が急増している昨今の情勢の中で、これをコントロールしうる治療法の開発は急務を要する。 初年度は、Nude ratを用いて、腎動脈選択的に抗糸球体血管内皮細胞抗体を注入し、Thrombotic micro-angiopathy (TMA:ヒトのHUSに相当する)を惹起した。注入と同時に糸球体内に血栓を生じ血管内皮細胞障害を生じる。術後3日目にラット腎動脈由来の血管内皮細胞移植による治療を試みたところ、治療群では組織障害度の改善を病理学的に確認し得た。腎機能に対する効果を判定するために、細胞注入後1週間後に採血ののち健側腎を摘出し、TMA腎のみとした。24時間後に再度採血し、BUN上昇の度合いを未治療群と治療群で比較したところ、未治療群78.3±8.4に対して治療群31.9±1.7と有意に改善を認めた(p<0.01)。更に、移植された血管内皮細胞を観察する目的で投与前にCFDA-SEで蛍光標識して実験を行った。移植された血管内皮細胞は、約10日後には糸球体内血管係蹄を構成する細胞となっていることを確認した。また、投与後約6時間で移植した血管内皮細胞の少なくとも一部は、血管係蹄に接着していることを電顕的に確認した。以上の内容は、本年度米国腎臓学会において口述で発表し(口述での採択は10%未満である)、絶賛を博した。本データは当初HUVECにより得られたデータであったが、その後の検討でデータのばらつきが生じたため、これをラット腎葉間動脈由来血管内皮細胞に置き換えることでデータの再現性が得られた。本手法に関する特許取得を試みたが、データ発表時点との関連で取得は困難であった。血管内皮細胞移植による効果は、移植直後より糸球体血流の改善が認められることがintra vital video CCDにより確認されており、現在報告に向けてデータをまとめている。細胞移植という観点からは、骨髄幹細胞移植に関する解釈が必要となってきた。本プロジェクトでは、骨髄血幹細胞移植を実施する目的でGreen fluorescent (GFP) ratを開発し、これを病態モデルへ移植する検討を開始している。移植に関しては、投与経路も重要であり、評価中。目的臓器に限局した広範な投与という点からは腎被膜下、均一性は保てないが細胞成分が大量に試食できる点と臨床応用性の点からは局注法、toleranceの得やすさからは骨髄内という結果が得られつつある。実験モデルでの検討としては、虚血性急性腎不全で骨髄幹細胞移植を再灌流直後より行ったところ、腎機能は増悪。特に尿素窒素の増悪は著しく、血管内皮細胞移植の方が効果良好である可能性が高いと考えられた。一方、本プロジェクト中に虚血性急性腎不全に対する幹細胞移植の効果を発表したグループがあり、我々の検討と異なったため、効果の違いについて幹細胞由来のサイトカイン・ケモカインといった因子が効果を発揮している可能性について検討した。ここで、末梢への骨髄から幹細胞誘導能を有するG-CSFによるインターベンションを行ない、投与法によっては治療効果を有することを見いだした。また、ここでの治療効果は幹細胞誘導というよりもむしろ血管新生促進作用による障害血管再生によるものであることをつきとめた(論文投稿中)。現在、前出のTMAモデルや慢性腎間質障害モデルなどにおいても効果が認められるかどうかについて検討中である。以上のように、本プロジェクトは極めてproductiveに遂行され、腎疾患治療に対する有用データを報告している段階に達している。
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