研究概要 |
バセドウ病は抗TSHレセプター抗体(TRAb)によって惹起される臓器特異的自己免疫疾患であるがその作用機序や産生機構についてはほとんど解明されていない。一方我々はバセドウ病患者のリンパ球からTRAb産生B細胞クローンを単離・解析してきた。今回,TRAbの作用機序,産生機構を内分泌学的・免疫学的に解明するために,TRAb遺伝子導入トランスジェニックマウスを作製した。刺激型TRAb産生B細胞クローンであるB6B7クローンのリンパ球ゲノム遺伝子から,プロモーター及びイントロンエンハンサーの領域を含むHeavy chainとLight chainを単離し,IgM型DNAコンストラクトを作製した。同DNAをC57BL/6Jマウスにマイクロインジェクションし,トランスジェニックマウスを作製した。サザンブロット法によって遺伝子導入を確認した5系統において,分泌型・膜型のヒトIgMの発現を確認した。12-16週齢のTG(n=74)とNTG(n=38)の血清中のfT4とTSHの濃度を測定では、fT4;TG2.1±0.63ng/dl(mean±SD), NTG1.2±0.30ng/dl : TSH;TG1.3±1.2ng/ml, NTG4.4±2.2ng/mlと有意な差がみられた(P<0.0001)。TGで,fT4とヒトIgM(相関係数(r)=0.507)の相関が見られ(p<0001), N=51(69%)にhyperthyroidismが認められた。^<9.9m>technetium pertechnetate甲状腺摂取率では、120分値(peak値);TG(n=3)16.4±3.14%, NTG(n=3)7.8±0.644%と有意な差が見られ(p<0.001), planer像でもuptakeの差が認められた。TGにおいて、末梢血、骨髄、脾臓のいづれにおいてもB細胞数の減少が認められ、自己寛容の成立が示唆された。また、lipopolysaccharide(LPS)投与によって同病の発症が引起され、環境因子の投与が示唆された。
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