研究概要 |
生殖腺は最も顕著な性差を示す組織であり,しかも性ステロイドホルモンの産生を通じて他の組織における性差の形成を誘導する。本研究では生殖腺の分化,および性分化のメカニズムの解明を目指して以下の研究を行なった。 (1)VinexinはAd4BP/SF-1と相互作用する因子として単離されたが,その発現が胎仔生殖腺に認められたことから遺伝子破壊マウスの作製を行った。生殖腺の発生過程について検討したところ,弱いXY性転換を示すことが明らかになった。雄胎仔生殖腺においてはMAPキナーゼのリン酸化が阻害されていたことから,性転換との関連を検討している。これらの検討を通して生殖腺形成過程におけるVinexinの機能が明らかになると思われる。 (2)ホメオボックス蛋白質Arxが生殖腺と脳に異常を呈する疾患の原因遺伝子であることを明らかにした。これまでに,10例以上の患者DNAの構造解析を行ったところ,種々の変異が同定された。これらの変異ARXと正常ARXの転写活性を調べたところ,ARXは転写抑制因子としての機能有することが明らかになった。Arx遺伝子破壊マウスを解析したところ,雄胎仔生殖腺において,ステロイド産生細胞であるライディッヒ細胞の出現が遅れることが明らかになった。ライディッヒ細胞の分化に必要とされる他の因子との関連を調べている。 (3)Ad4BP/SF-1がSUMO化による修飾を受けることが明らかになった。SUMO化による修飾はAd4BP/SF-1の転写活性化に対し抑制的に働くこと,MIS遺伝子の転写をAd4BP/SF-1とともに協調的に活性化するSox9も同様にSUMO化され,両者の間の協調的転写活性もSUMO化による抑制を受けることが明らかになった。 (4)Ad4BP/SF-1の273番目のスレオニン残基がリン酸化による修飾を受けることが明らかになった。この修飾はAd4BP/SF-1のDNA結合に影響を与えることによって,転写活性を調節していることが明らかになっている。
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