研究分担者 |
松田 暉 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00028614)
澤 芳樹 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (00243220)
福嶌 教偉 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30263247)
高野 弘志 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70346196)
市川 肇 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60303939)
宮本 裕治 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80229898)
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研究概要 |
本研究の目的は,補助人工心臓(Ventricular Assist Device, VAD)を要する重症心不全末期の症例に対して,新しい治療strategyとして心筋再生因子による心筋再生療法を行ない,自己心機能の回復を促進し,補助循環からの離脱(Bridge to Recovery)を実現することである. [方法]成山羊6頭を用いて,冠動脈左前下行枝を結紮し,心筋梗塞を作成した後,両心室補助人工心臓を装着し、これらを2群に分け,プラスミドを用いてHGF-cDNAを投与した群と、同様の手段でβgalactosidaseを投与した群を比較検討した.プラスミド投与後、VAD補助下に維持し,血行動態、心機能を経時的に測定した.さらに組織学的検討を行った. [成績]%FS、心拍出量はHGF投与群で有意に改善した。組織学的には,HGF投与群で線維性変化は抑制され、心筋細胞もほぼ正常な状態に保たれていた.また、HGF投与群では、有意な新生血管の増生を認めた。 [総括]虚血などによる心筋障害後には,心臓へのwall stressや虚血領域周辺から広がる線維性変化の進行,アポトーシスが左室リモデリングを引き起こし,心不全増悪の原因となることはよく知られている.VADによる左室減負荷は心筋保護に有用であると考えられているが,それだけでは十分に左室リモデリングは抑制できない.今回は,それに加えて,心筋保護作用を持つHGF遺伝子を導入することにより,虚血領域での血管新生,抗線維化作用などの効果により,心筋が減負荷されて,良好な血行動態が維持されている間に,心筋への障害が最小限にとどまり,左室リモデリングが抑制され,心機能の良好な回復が得られた.補助人工心臓を要する重症心不全において,HGF遺伝子治療を併用することは,補助循環からの離脱率を向上させる新しい治療法のひとつとして有用である可能性が示唆された.
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