研究課題
基盤研究(B)
我々は、ES細胞由来神経系細胞移植によるパーキンソン病治療法の開発を目指して研究を進めているが、臨床応用を目指すにはヒトと同じ霊長類を用いた実験が必要不可欠である。そこで、カニクイザルES細胞から誘導したドーパミン産生神経をカニクイザルパーキンソン病モデル脳に移植し、行動解析を行った。カニクイザルES細胞をPA6という間質細胞の上で約2週間培養すると、ほとんどの細胞が神経幹細胞様になる。この細胞をsphere法で培養しFGF2とFGF20を加えると、全体の約半数がニューロン、その4分の1がドパミン神経に分化するようになる。MPTPの静脈内投与でカニクイザルパーキンソン病モデルを作成し、その線状体にES細胞由来ドパミン産生神経(前駆細胞)を移植すると移植群においては徐々に神経脱落症状の改善がみられるようになり、移植後10週目に有意な改善が認められた。その後、F-dopaの取り込みをPETにて評価した。コントロール群においてはF-dopaの取り込みが低下しているのに対し、移植群においては有意な上昇がみられ、移植細胞がドーパミン神経として機能していることが確認された。PET後に脳切片の染色を行った。移植に先立ち細胞をBrdUでラベルしたが、移植群の線条体においてBrdU陽性細胞の生着がみとめられた。さらにTH陽性細胞やDAT陽性細胞も確認された。これらの多くはBrdUと共陽性であり、移植されたES細胞由来のドーパミン神経であると考えられた。また、腫瘍形成は認められなかった。カニクイザルES細胞から分化した中脳ドーパミン産生神経の移植によってカニクイザルパーキンソン病モデルの行動が改善したことは、同じ霊長類であるヒトにもこの方法が適応できる可能性を示唆する。ただし、実際の臨床応用の前には1年以上の長期経過観察によって、その効果と安全性の検証が行われなければならない。と同時に、ヒトES細胞からの中脳ドーパミン産生神経誘導とその移植実験が必要である。
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