研究課題
基盤研究(B)
ストレス応答に関与するメジエーターを転写因子レベルで調整することは、車症感染症に対する新たな治療戦略と考えられる。本研究の焦点を以下の3点に絞り実施した。1)重症感染症時の白血球核内NF-κBとステロイドレセプター(GR)の両バランスに基づいた治療戦略の確立。2)重症感染症時の白血球機能に関する研究。3)ストレス応答遺伝子の発現に関する研究。まず白血球核内NF-κBならびにGRの定量法をフローサイトメトリを用いて確立し、侵襲時の両者の関係について検討した。29例の外傷や敗血症の患者と15例の健常人でNF-κBならびにGRを測定した結果、患者群ではNF-κB値ならびにGRが有意に上昇していた。両転写因子には有意な正の相関を認めたが、特に侵襲後第3病日以降で著明であった。NF-κBの上昇に相まって炎症性サイトカインは上昇した。またGRの上昇に相まって血中コルチゾールは増加した。以上より侵襲には炎症を誘導する転写因子NF-κBの増加に対応して、抗炎症作用を誘導するGRが増加し、両者でバランスを保ちながら侵襲反応が進んでいることが明らかとなった。また敗血症時のG-CSF投与時、ならびに重症呼吸不全患者に対するステロイド投与時のNF-κBの発現とGR値の関係(バランス)について検討した。その結果、G-CSF投与ではNF-κBもGRもともにバランスを保った状態で上昇した。またステロイド投与時はGRが上昇し、反対にNF-κBは低下し炎症反応が抑制されることが明らかとなった。重症感染症時の白血球機能に関する研究では、白血球から産生される熱ショック蛋白やマイクロパーテイクルの機能について検討した。これらの産生がストレス下に増大し、侵襲に対して防御あるいは組織障害因子として機能していることを明らかにした。さらにストレス下における遺伝子発現についてNa/K ATPaseの発現やInsulin-like growth factorなどの増殖因子の関与を明らかにした。
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