研究課題
基盤研究(B)
本研究は、循環制御機構および疼痛制御機構における内因性カンナビノイドの役割を解明するために、微小循環での白血球粘着、遊走能への影響を明らかにすることを目的とした。炎症反応の特徴として認められる好中球血管外遊走および血漿漏出におけるカンナビノイドの役割をハムスターの頬袋微小循環で検討した。Golden hamsterをウレタン麻酔後、気管切開し、自発呼吸下に右頚動静脈にカニューレを挿入した。左頬袋粘膜の細静脈を露出し、細静脈の血流量(Flow)、血流速度(Velocity)、血液量(Mass)を計測した。また、細静脈にロイコトリエンB4(LTB4)を局所投与し、光学顕微鏡下に白血球の粘着(adhesion)、血管外遊走(migration)を計測した。さらに、これに対するカンナビノイド受容体の刺激薬であるWIN55212とCB1拮抗薬であるAM251とCB2拮抗薬のAM630の効果を検討した。LTB4により、rolling及びadhesionが惹起され、好中球の血管外遊走が確認された。これに対し、AM251とAM630の投与は明らかな影響は認められなかった。しかし、WIN55212は好中球の血管外遊走を有意に抑制した。また、このWIN55212による好中球の血管外遊走の抑制効果は、AM251とAM630の同時投与によって、消失した。なわち、WIN55212はカンナビノイド受容体のCB1およびCB2受容体両方の刺激により、好中球の血管外遊走を抑制したことが示唆された。本研究から、両カンナビノイ受容体の刺激は炎症時の血管外遊走を抑制し、過剰な炎症応答を抑える可能性が示された。
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