研究概要 |
本研究においては、緑内障性視神経障害に免疫応答やストレス応答反応が神経保護的に働くという我々の作業仮説を治療開発に役立てるために行われた。まず第一に、炎症性サイトカインであるIL-1とその受容体アンタゴニスト、またIL-6が網膜障害と神経保護に複雑な反応を惹起することを認めることを報告した(EER 73:661,2001;BBRC 302:226,2003)。さらに、緑内障視神経障害に関連した免疫応答を解析するために、開放隅角緑内障患者血清を用いた遺伝子ライブラリスクリーニング(SEREX法)を行い、いくつかの自己抗体を発見した(ARVO,2003発表)。第二に、緑内障視神経障害と免疫異常の関連に出発して、白血球・血管内皮間相互作用に着目して、新しい治療開発に結びつけることを考えた。この観点から残した我々の実績が、スタチンや抗トロンビンIIIなどの神経保護効果(Arch Ophthalmol 120:1707,2002; IOVS 44:332,2003)や抗LOX-1抗体による炎症抑制効果の発見であった(Pro Natl Acad Sci USA 100:1274,2003)。第三に、従来行ってきた生体内保護因子としての成長因子として、BDNFやLEDGFの神経保護作用の検証も治療的観点から行って有意な効果を証明した(J Neurochem 87:290-296,2003; Brain Res, in press)。第四に、特殊な緑内障視神経障害の形態として、熊本地域に局在していた家族性アミロイドーシスの続発緑内障について解析した(Arch Ophthalmol 121:351,2003; Am J Ophthalmol 135:188,2003; Amyloid 9:247,2002)。
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