研究課題
基盤研究(B)
Porphyromonas gingivalisは偏性嫌気性細菌であり、慢性歯周炎の発症と増悪に関与する重要な病原菌である。本菌の病原因子のいくつかについては静止期への移行や熱といった環境ストレスによってそれらの発現が影響されることが指摘されているが環境ストレスに反応して作動する防御機構の詳細はほとんどわかっていない。本研究課題「歯周病原細菌のポストゲノム解析:口腔環境因子によるタンパク発現機構の包括的研究」では本菌の培養において対数増殖期から静止期に入ると顕著に発現が誘導される新規タンパクUstAに着目して解析を進めた。このustA遺伝子はP.gingivalis W83ゲノム遺伝子番号PG0246とほぼ一致する位置に存在する。PG0246はustA遺伝子内の22番目のメチオニンコドンを翻訳開始コドンとしたものであるが今回の研究からそれは正しくなく、さらに上流に位置するメチオニンコドンが真の開始コドンであることが明らかになった。ustA遺伝子の下流にはuniversal stress protein(Usp)の遺伝子が位置しており、この位置関係は近縁種であるBacteroides thetaiotaomicronやBacteroides fragilisでもみられた。薬剤耐性遺伝子DNAをustA遺伝子DNA領域に挿入したustA変異株を作製するとともにustA変異株のfimA遺伝子領域に野生型のustA遺伝子を導入した株を作製し、UstAタンパクの欠損が本菌の性質にどうような影響を与えるかを検討した。ustA変異株では野生株と比較して培地中での増殖の速度が遅くなり最終的な菌濃度も減少した。また、2次元ゲル電気泳動法とPMF解析により全タンパクのプロファイルについて検討した結果、スーパーオキシドデジスムターゼ、チオールペロキシダーゼ、チオレドキシンの発現量が変異株で顕著に増加していた。このように酸化ストレス防御に関与するタンパクの発現量が増加したことから、各種の酸化物やDNA傷害剤に対する感受性を調べた。その結果、ustA変異株ではdiamideに対して顕著に抵抗性であることがわかった。また、ustA oxyR二重変異株はoxyR変異株と比較してdiamide、metronidazole、mitimycin Cに対して明らかに抵抗性であった。これらの結果はUstAが本菌の酸化ストレス防御に関わるタンパクであることを示唆した。他の細菌では静止期での遺伝子発現においてシグマ因子の1つであるRpoSが調節因子として注目されているが、本菌にはRpoSが存在せず、他の因子の存在が示唆されるが、UstAがその候補の1つと考えられる。
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