研究概要 |
骨芽細胞の分化は転写因子であるRunx2/core binding factor alpha1(Runx2),Msx2,AJ18,Osterix, Dlx5のみならずtransforming growth factorβ(TGF-β)superfamilyの一員であるbone morphogenetic proteins(BMPs)やglucocorticoid(GC)によってコントロールされている。GCはin vivoで骨タンパクの合成や骨形成を阻害し,骨粗鬆症を引き起こすと言われている。一方,GCはin vitroで細胞増殖,骨芽細胞分化,骨タンパクの発現,石灰化を促進するとも考えられている。本研究において,まずラット胎生13日齢から生後90日齢の形成期下顎骨の形成過程における骨芽細胞関連タンパクosteoblast/osteocyte factor45(OF45)の遺伝子発現を検討した。また,in vitroではラット頭蓋冠由来骨芽細胞様初代培養細胞(fetal rat calvarial cells, FRCC),骨髄由来骨芽細胞様初代培養細胞(rat bone marrow stromal cells, SBMC)または骨芽細胞様樹立細胞株(ROS17/2.8,ROB-C26)に合成GC(dexamethason, Dex)またはBMP-2添加または非添加で培養し,これらの培養細胞における転写因子および骨芽細胞関連タンパクであるOF45,dentin matrix protein1(Dmp1),osteocalcin(OC), bone sialoprotein(BSP)およびosteopontinの遺伝子発現を検討した結果,次のような結論を得た。1.OF45 mRNAは骨化の過程において一過性に成熟骨芽細胞に発現し,引き続き骨細胞に発現することから,OF45タンパクは骨細胞表現形質の重要なマーカーとなり,骨細胞機能を調節していると考えられた。2.DexによってFRCCに誘導されるRunx2とOsterix遺伝子の発現は,骨芽細胞マーカー(OCおよびBSP)遺伝子の活性化を伴うとともに骨に特異な基質を産生し,石灰化を促進すると考えられた。3.Dex処理するとSBMCのOF45遺伝子発現はDmp1,OC, BSPおよびosteopontin遺伝子発現と比べると極めて強度に誘導された。4.ROS17/2.8細胞における転写因子(AJ18,Osterix, Dlx5)および骨芽細胞関連タンパク(alkaline phosphatase, osteopontin, BSP, OC)の遺伝子発現はDexによってコントロールされており,また,Dex添加の有無に関わらず石灰化にともなって変化すると考えられた。5.ROB-C26細胞におけるAJ18とRunx2遺伝子発現はBMP-2とTGF-β1によってコントロールされており,また,BMP-2とTGF-β1は,AJ18遺伝子発現に異なった効果を有するが,骨芽細胞分化過程においては本質的にRunx2遺伝子発現を促進すると考えられた。
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