研究概要 |
本研究では、細胞周期制御因子の中でも重要な働きをすると考えられているp27^<KIP1>に注目し、口腔癌での発現を検討した。その結果、p27^<KIP1>の制御因子Skp2,Jab1の過剰発現とp27^<KIP1>の発現低下が口腔癌で生じていることがわかった(Oncology 65, 2003)。また、口腔扁平上皮癌細胞に上皮成長因子(EGFR)の特異的阻害剤を作用させたところ、p27^<KIP1>の発現増強が見られ、細胞周期はG1期に停止し、細胞増殖が抑制され、分子標的治療の可能性が見いだされた(Oral Oncol. 40, 2004)。また、本阻害剤の応用により、実験的舌癌の頸部転移モデルにおいて、転移の抑制効果が見られた(Cancer Lett. 201, 2003)。さらに、本剤の応用で放射線治療効果の増強が認められた(Int.J Cancer, 107, 2003)。一方で、細胞周期の進行に大きく関与するCyclin Dependent Kinase (CDK)に関しても、その特異的阻害剤であるFlavopiridolを用いて、細胞周期の阻害を行うことで分子標的治療への応用を試みた。その結果、Flavopiridolは細胞周期をG1期ならびにG2/M期に停止させ、細胞増殖抑制ならびにアポトーシスを誘導した(Oral Oncol. 39, 2003)。同様の受容体経路の阻害による細胞増殖の抑制はPeroxisome proliferator-activated receptor γに対する阻害剤によっても生じた(Oral Oncol. 39, 2003)。また、その他の分子標的の検索結果で、DNA-PKおよびGRO-1遺伝子の治療応用への可能性が示唆された(Cancer Sci. 94, Oncology in press, 2003)。以上の結果より、これらの薬剤が、細胞周期制御を介した分子標的治療薬になる可能性が示唆された。
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