研究分担者 |
河口 浩之 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (10224750)
高田 隆 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10154783)
栗原 英見 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40161765)
水野 智仁 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (60325181)
柴 秀樹 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (60260668)
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研究概要 |
本研究では,セメント質再生過程におけるマラッセ上皮遺残とエナメル蛋白の関与を明らかにするため,ラット実験的歯根吸収モデルを用いた組織学的検討を行った。また、培養したヒト歯周靭帯由来上皮細胞(E cell)の骨関連タンパク質遺伝子の発現を歯周靭帯由来線維芽細胞(F cell)と比較検討した。 動物実験では8週齢ウイスター系ラットの上顎臼歯に機械的刺激を与えることによって実験的に歯根面の吸収を誘導した。処置後7日から10日では歯根面の吸収が観察された。マラッセ上皮遺残は歯根吸収窩に隣接する歯根面付近に存在したが,吸収窩に面する歯周靭帯組織には観察されなかった。抗Osteopontin(OPN)抗体を用いた免疫染色では,処置後10日の吸収窩周囲のマラッセ上皮遺残に陽性反応が認められた。処置後14,28日では,セメント質の再生が観察され、リバースラインと修復セメント質に抗OPN抗体陽性反序が観察された。処置後7日または処置後10日に観察された吸収窩に近接するマラッセ上皮遺残は抗Bone Morphogenetic Protein-2(BMP-2)抗体および抗Ameloblastin抗体にそれぞれ陽性反応を示した。以上の結果から,マラッセ上皮遺残はセメント質再生過程において,エナメル蛋白であるAmeloblastin,非コラーゲン性蛋白であるOPNおよびBMP-2を発現していることが明らかとなった。このことはマラッセ上皮遺残が,発生過程のセメント質形成におけるヘルトウィッヒ上皮鞘と同様に,セメント質修復に深く関与していることを示唆している。 E cellおよびF cellは,矯正学的治療の必要性から便宜的に抜去された健全な小臼歯の歯根面から分離,培養した。その結果、E cellは敷石状の形態を示し、ケラチン5と8を発現した。またE cellのALPaseおよびBMP-4 mRNA発現量はF cellと、比べて少なかった。一方、OPN mRNA発現はF cellと比べE cellにおいて強かった。この結果からE cellとF cellは、骨関連タンパクの質の異なる発現パターンを示し、この発現の相違が,歯周組織のリモデリングや再生におけるマラッセの上皮遺残細胞と歯周組織の未分化関葉系のそれぞれの役割に関係していることが示唆された。また,E cell培養系は、間葉系細胞のセメント芽細胞への分化におけるマラッセの上皮遺残細胞の役割を解析するために有用であると考えられる。
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