研究分担者 |
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (80266353)
塚原 修一 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 総括研究官 (00155334)
小林 傳司 南山大学, 人文学部, 教授 (70195791)
札野 順 金沢工業大学, 工学部, 教授 (90229089)
中島 秀人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (40217724)
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研究概要 |
イギリスでは1990年代を通して,一般市民を科学知識が注入されるべき「真空」な存在としてとらえ、そこへ「正しい」科学知識を流しこむといった「欠如モデル」は不適切である,という認識が高まってきた。そしてそれに替わり,「双方向性」を意識した活動が盛んになってきた。言い換えれば,科学教育が「科学コミュニケーション」の一部として考えられるようになった。 具体的には,理系に進む学生のための科学教育だけではなく、多様な目的に応じた科学教育を提供することがなされ,博物館等における理科教育においても注目すべき変化がある。例えば、Science Museumに設置されたWelcome Wingという新しいセクションでは,科学と社会・生活に関するinteractiveなセクションが設けられている。また,Cafe Scientifiqueも注目に値する全国的規模のプロジェクトである。(同様の動向は,オランダにおいても確認された。) 近年,コンセンサス会議などに示されるように,科学技術への「市民参加」や「合意形成」が盛んに言われる。その原因は,1970年代に始まった社会の変化に原因がある。また物理学者のワインバーグが指摘したように,「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題群からなる領域」(彼の言う「トランス・サイエンス」の領域)が大きくなってきたのである。このことから,科学教育(科学コミュニケーション)のありようも,それに応じて変化するべきであることが示唆される。 日本における科学教育の現状についても,その歴史ならびに実情についての調査を行ない,「社会の中で科学がいかに機能するか」(how science works in society)といった点についての理解が肝要であることが示唆された。
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