配分額 *注記 |
16,500千円 (直接経費: 16,500千円)
2005年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2004年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2003年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2002年度: 9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
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研究概要 |
生体組織のほとんどは水を70〜80%含む生体高分子ゲルである。生体中の水は,物質代謝やイオン輸送,組織構造の維持,熱的あるいは化学的変性からの保護といった作用を担っており,水の果たす役割は重要である。そこで,生体高分子と水との相互作用を明らかにするため,生体高分子ゲル中の網目構造およびゲル中の水の束縛状態について,陽電子消滅寿命測定法および熱分析を用いて定量的に調べることを試みた。 生体高分子としては,生体中に多く含まれるコラーゲンの変性物であるゼラチンを用いた。まず,含水したゼラチン中の水の束縛状態を調べるため,DSC曲線から得られる融解エンタルピーの値から,全含水量に対する結合水,自由水の重量%を求めた。その結果,ゼラチン濃度の増加に伴って結合水は増加,自由水は減少し,ゼラチン濃度60wt.%以上ではほぼ全てが結合水になることが定量的に確かめられた。このような,含水に伴う水の束縛状態の変化はゼラチンの網目構造に起因すると考えられるため,さまざまな濃度のゼラチンの自由体積空孔半径について,陽電子消滅寿命測定の結果を,PATFIT-88プログラムを用いて解析することによって調べた。その結果,乾燥ゼラチンの自由体積空孔半径は純水のそれよりも小さく,含水していくにつれて大きくなり,純水の自由体積空孔半径に近づくことが分かった。さらにその増加は自由水の存在する領域では緩やかであり,結合水のみの領域において急激な増加が見られた。これらの結果より,膨潤過程において,まずカルボキシル基が多く親水性であるヘリックス構造内に水分子が優先的に入り,ヘリックス構造が十分に押し広げられた後,ヘリックス構造間に水分子が入ると考えられる。
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