研究概要 |
ダストの供給が海洋や気候に与える影響を解明するため,大気と海洋の間の気体交換が活発な海域であり,ダスト供給の変動が大気中の二酸化炭素濃度を変化させてグローバルな気候に影響する北太平洋において,ユーラシア大陸からのダスト供給と気候変動の関係を調べた.まず,これまで時間解像度が低かった北太平洋の堆積物の年代を地磁気強度層序によって高時間解像度で求めた.酸素同位体比や放射性炭素法による年代測定が困難である珪質堆積物コアからU-channelサンプラーを使って連続試料を採取し,2cm間隔で自然残留磁化測定を行った.自然残留磁化は交流消磁によって磁化の安定性の検討を行い,自然残留磁化強度を規格化するために交流消磁後に非履歴性残留磁化を付加して自然残留磁化と同様に交流消磁を行った.この試料から得られた地磁気強度の変化と地磁気強度の標準曲線との比較から,過去約80万年間の年代を数千〜数百年のオーダーで求めることができた.次に,ダストの供給量を示す磁性鉱物の含有量ならびにダストの粒径を表す磁気的性質を求めるため,磁気ヒステリシス測定,低温磁化測定,さらに初年度に製作された改良型の磁気天秤を用いて,高温(〜600℃)での熱磁気測定を行った.その結果,磁気ヒステリシス測定から堆積物は2種類に明瞭に分類することができ,堆積物の色調に対応することがわかった.高感度の低温ならびに高温での磁気測定からその2種類の堆積物はマグネタイトの酸化度の違いに起因し,磁気的性質は堆積物中での酸化還元状態の変化を記録していることがわかった.地磁気強度年代を基にして磁気的性質を高い解像度の時系列で表すことができ,氷期-間氷期サイクルと明瞭な対応関係が存在することを明らかにすることができた.
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