研究概要 |
起源の異なる14種類の土壌から腐植物質を抽出し、それらの腐植化度のパラメータ(元素組成と官能基量)と酸化触媒反応によるペンタクロロフェノール(PCP)の分解承との相関関係を調べた。この実験では、酸化触媒として鉄(III)-ポルフィリン錯体を用い、酸化剤としてKHSO_5を使用した。その結果、腐植化度が低い泥炭や堆肥土壌由来の腐植物質を共存させるとPCPの分解率が大きく増加することを見出した(Environ.Sci.Technol. 2003,37,1031)。また、PCPは酸化触媒反応によりフェノキシラジカルなど酸化中間体となり、それが腐植物質とラジカルカップリングして腐植化物が生成することを明らかにした。そして、腐植化物の毒性をバイオアッセイにより調べた結果、PCPのみの場合に比べ大きく低下していることを明らかにし、酸化触媒反応に伴うPCPの腐植化はその無害化に大きく寄与することを世界で初めて実証した(Environ.Sci.Technol. 2003,37,386)。さらに、鉄-ポルフィリン錯体を用いた酸化触媒反応系をPCP汚染土壌に適用し、泥炭腐植酸の添加が溶液系だけではなく土壌系でも浄化効率の向上に有効であることを実証した(Toxicol.Environ.Chem. 2003,85,39)。また、鉄-ポルフィリン錯体以外に鉄-フタロシアニン錯体やマンガン-ポルフィリン錯体のような他のバイオミメティック触媒でも、泥炭や堆肥土壌由来の腐植物質の添加が分解効率の促進に有用であることを明らかにし、PCPの酸化分解効率の促進に及ぼす腐植物質の効果に対する広汎性が確かめられた。シクロデキストリンをモデル化合物とした実験から、このような低腐植化度の腐植物質による酸化触媒反応の促進に、腐植物質中の糖質構造が関与していることを示唆することができた(J.Mol.Catal.A, in press)。
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