配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
2004年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2003年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
2002年度: 6,900千円 (直接経費: 6,900千円)
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研究概要 |
高圧NMRを用い,プリオン中間体の構造を残基レベルで特徴づけることに,世界で初めて成功した(Kuwata et al., Biochemistry,2002)。我々が見出したプリオン中間体(PrP^*)では,ヘリックスB,Cに部分的な変性が見られることが分かった。特に,N端のβシート部分と接触している部分が特に局所的な安定性が低い。このような部分的に破壊されたプリオン中間体(PrP^*)が,スクレイピー型(PrP^<Sc>)への変換過程と関わっている可能性が高いと考えられる。 プリオンの疎水性クラスター領域における部分ペプチドが形成するオリゴマーの立体構造を,電子顕微鏡,円二色性スペクトル,NMR,計算機シミュレーションを用いて決定した(Kuwata et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,2003)。PrP106-126は,メチル基間の疎水相互作用により,オリゴマー構造が安定化されていた。 ハムスタープリオンにおいて,NMR緩和時間測定によるミリ秒の遅い揺らぎを示す部位と,高圧NMR測定による安定性の低い部位とがよく相関していることを発見した(Kuwata et al. Biochemistry,2004)。熱安定性の低い部位は,遺伝性ヤコブ病の原因となる変異とよく相関しており,このような蛋白質のグローバルな遅い揺らぎが,病的構造変換と関連していることが分かった。プリオンの疎水性クラスター部分は,細胞毒性に関与し,またC端のヘリックス内部で熱安定性の低い残基は,感染性に関与していると考えられる。 蛋白質ダイナミクスの一般的な理論として,「数論的生命科学理論」を構築した(桑田一夫,数理科学,2005)。プリオンのような複雑極まりない現象であっても,数論的方法を通じて厳密に理論化できる可能性があることが分かった。21世紀初頭において,新しい厳密な生命科学理論がここに登場した。
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