配分額 *注記 |
8,200千円 (直接経費: 8,200千円)
2004年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2003年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2002年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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研究概要 |
中国四川省綿陽市に所在する永興双包山2号墓漢代の墓で、多量の漆製品や木製品が出土した。これらの漆製品や木製品を保存処理するために、平成14年から16年にかけて、日中の文化財保存修復専門家が相互に協力して漆器や木器の保存処理実験を行った。実験の結果、 (1)漆器や木器の樹種を調査した結果,ヤナギ属とクスノキ属が検出された。 (2)副葬品には日常的に用いられたものと副葬用に製造された明器とが認められた。前者は容器類が,後者は木馬や木俑,木牛などが該当する。後者の塗装法は斉一でなく,馬は丁寧な塗装であるのに対して木俑や木牛の下地は泥地であり,そのため塗膜がほとんど剥落したとみられる。 (3)高級アルコール法(ステアリルアルコール)で出土した漆器・木器を保存処理した結果,最大収縮率を4〜10%程度に抑えることができた。 (4)ステアリルアルコールは非水溶性であり,同方法で保存処理した遺物の保管,保存,陳列は四川省のように年間を通して湿潤な環境においても容易である。 (5)ステアリルアルコールは分子量が300以下と低いのが特長である。しかも可逆性があることから将来さらに進んだ保存処理法が開発された際に,比較的簡単に溶解して他の方法に置換することが可能である。 (6)高級アルコール法で保存処理した漆器や木器は,木器の変形が少なく,木材の色が出土直後の状態に近く,違和感が無い。 (7)実験に供した木胎漆器では木胎の変形が小さかったが,漆膜の表面には軽微であるが木胎と漆との挙動の差により,表面にしわがよる現象が見られた。この点についてはさらに改良を加える必要がある。
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