研究概要 |
対象6ヵ国を概括的に比較すると,北欧3ヵ国ノルウェー,スウェーデン,デンマークにおけるグループハウジングの住居水準の高さが傑出しており,このうち,住居形式や床面積水準,平面計画や面積の構成などの数多くの点において,ノルウェーとスウェーデンの施設解体完了国の共通性が指摘できる。居住者の能力を最大限に引き出すために,私的領域での自立性を重視する生活支援と,これを補う空間的条件が整備されている。両国の相違点は,スウェーデンでは,同一の居住ユニットにおいても異なる平面構成を入居者の個別性に応じて確保する融通性の高さが読み取れるが,ノルウェーはこれらを包含する規格化によって対応している点である。この計画基準の規格化は,デンマークにも該当する。全国的に空間的条件は酷似している。また,空間構成や生活支援における共同性重視の志向も特徴である。 他方,施設存続国であるフィンランド,ドイツ,オランダの3ヵ国は,大局的には近似した住居水準をもつ国としてグルーピングできる。私的領域は,従来型の「シェアードハウジング」が中心であり,全体の面積水準が高くないことにも関連して,面積構成も共用部分の占める比率は高い。その一方で,今後のトレンドを示すリーディングの事例も散見された。フィンランドでは,今後は若い人の希望が強いキッチン付き(すなわち「住戸」タイプ)を建設するという行政担当の意向が聞かれ,また,オランダでは近年の計画事例において「住戸」タイプ移行の兆候が顕著に認められるなど,近い将来,前述した北欧3ヵ国並みの水準に到達することが推察される。 目標とすべき水準をほぼ実現している対象国の計画内容とそこでの生活状況,あるいは,まさにこれに近づこうとする諸国の実態,わが国の知的障害者の生活環境整備を展望する上で,きわめて示唆に富むこれらの事例について,研究成果報告書において多面的に言及した。
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