研究概要 |
地熱地帯における潜在的地熱資源の事前評価は,その対象地域の地熱開発をおこなう上で非常に重要である.この地熱資源評価のためには地下熱量の推定や地熱流体の化学的な評価が不可欠であるが,これをおこなう上での最重要な対象として,地熱地帯の表層部に存在する熱水起源の沈積物があげられる.この熱水鉱床としては成り立たなかった,すなわち有用な金属等を含まない主にケイ酸塩を主成分とする沈積物(シリカシンター,石英脈,)や,その内部に取り込まれた地熱流体を評価することによって,過去の地熱活動の履歴はもちろんのこと,現在の地熱活動度についても十分な情報を得ることが出来ると考えられる. このために,まず現在でも活発な地熱活動を示すShargaljuut地熱地帯(モンゴル),Te Kopia地熱地帯・Waiotapu地熱地帯(ニュージーランド)においてフィールド調査およびサンプルの採取をおこない,また,過去に活発であった地熱地帯であるShuteen岩体(モンゴル)についてもフィールド調査およびサンプル採取をおこなった.これらのサンプルは鉱物評価として過去にあまり例の見られないSEM-CLと呼ばれる手法を用いた評価と従来から用いられてきた流体包有物(岩石内部に存在する過去の地熱流体)による評価を併せておこなった. また,室内実験において最高温度600℃・最高圧力60MPaの熱水条件下における岩石溶解と再沈積に関する実験をおこなった.これによって得られたサンプルについてはフィールド調査によって得られたサンプルとの同様の評価をおこなった. これらのフィールド調査および室内実験における結果の整合性から,地熱地帯における熱水-岩石相互作用およびそれをもたらした地熱活動の変遷について,推定ではあるがある程度の知見を得ることが可能であった.よって,地熱地帯におけるシリカシンターや石英脈を評価することによって,地熱地帯の大まかな評価をおこなうことが可能であると考えられる.
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