研究課題
基盤研究(B)
ボルネオ島に分布する熱帯雨林の林冠部におけるアリ相、アリ類の存在量と空間分布、それらの時間的変化、それらが植食者の量とはたらき(食害量)に与える影響を知るために、マレーシア国サラワク州の熱帯低地にあるランビル国立公園のフタバガキ混交林において、当地の林冠到達システムを用いて、林冠を構成するフタバガキ科を中心とする樹種15種の林冠部でのアリ類と植食者の個体数調査と葉の食害量の調査を繰り返しおこなった。また、林冠部に生息する着生植物、およびそれによって形成される樹上土壌に着目して、それがどの程度、アリの巣場所として利用されているのかについて野外調査をおこなった。その結果、地上部と樹上部にまたがって採餌行動圏をもつ種類はきわめて少数のものに限られること、林冠部でのアリの空間分布は時間的に安定であること、特定の種類が林冠部を好み、あるいは着生植物に適応してこれを巣場所として利用することなどが確かめられた。また、一部の林冠部には地上部に営巣する種類の樹幹への行動圏の拡大が見られる一方、着生植物の空洞部の内側に営巣するアリ種が林冠の広い部分を占めていることが確かめられた。両者の分布域はほとんど重複しないうえ、他のアリ類の分布に影響を与えており、アリ種間に空間をめぐる強い競争がはたらいていることが推測された。着生植物に営巣するアリは、営巣する着生植物種以外のつる植物、着生植物の量・分布を制御している可能性が示唆され、また、この影響を通じて間接的に他のアリ種の分布に影響を与えている可能性が示唆された。葉の食害アリの個体数の相関から、いずれのアリ種も、林冠部において捕食者として食植者制御に大きな役割を果たしていることが示唆された。
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