研究課題/領域番号 |
14405007
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
生態
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江口 和洋 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (60136421)
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研究分担者 |
上田 恵介 立教大学, 理学部, 教授 (00213348)
永田 尚志 国立環境研究所, 生物多様性研究プロジェクト, 主任研究員 (00202226)
高木 昌興 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70311917)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
14,600千円 (直接経費: 14,600千円)
2004年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
2003年度: 4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
2002年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
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キーワード | 協同繁殖 / ヘルパー / ハイガシラゴウシュウマルハシ / 血縁関係 / セアカオーストラリアムシクイ / オーストラリア / 鳥類 / 血縁度 / セカオーストラリアムシクイ |
研究概要 |
1.3年間の調査期間中、ハイガシラゴウシュウマルハシの14群〜22群を確認し、観察を行った。平均群れサイズは4.21、3.85、4.59で、つがいのみの群れは少なく、大半はつがいに1〜7個体が加わっていた。全メンバーの性判定が出来た群れの性比は各年、11:11(6群)、25:20(13群)、14:12(9群)と、ほぼ雌雄同数であった。産卵数は1〜4卵で2卵が最も多く、複数メスによる同一巣産卵も見られた。巣立ち成功群の割合は2003年45%、2004年56%であった。失敗原因の大半は捕食で、ヒナの餓死は少なかった。つがいのみの群れでは巣立ちはゼロ、付加個体(ヘルパー)のいる群れでは平均巣立ち数は0.88であった。ヘルパーのいる群れでは、ヘルパー数と巣立ちヒナ数に相関はなかった。抱卵は特定のメス1個体のみが行うことが多かった。ヒナへの給餌は群れメンバーのほとんどが行ったが、少数個体はまったく給餌を行わなかった。2才以上の個体は1才個体に比べて給餌頻度が高かった。群れサイズが大きいほど単位時間ヒナ当たりの給餌回数は多かったが、差は有意ではなかった。本種は絶対的協同繁殖種であると考えられるが、繁殖への貢献度は個体差が大きく、ヘルパー数が増えても繁殖成功は高くならなかった。 2.ハイガシラゴウシュウマルハシについて、3年間で合計29ブルード、45ヒナの性を判定し、親による性比調節の可能性を調べた。性を判定した全ヒナ中、30個体(66.67%)が雄であり、ヒナの個体群性比は雄に偏っていた。ヒナが複数いるブルードでは、多くの場合でブルード内のヒナの性は同じであった。ヘルパー性比が雌に偏っているグループでは、ブルード性比は雄に偏る傾向があった(0.72)。ヘルパー性比が雄に偏るにつれて、ブルード性比は雌に偏る傾向にあった。重み付きグループサイズが小さなグループでは、ブルード性比が雄に偏る傾向があった(0.72)。ハイガシラゴウシュウマルハシの雌は、ヘルパー性比と年齢で荷重をかけたヘルパー数に応じて性比を調節している可能性が高い。雌雄ともにヘルパーとなる鳥種において、性比調節の存在を示唆する結果を報告した研究は、我々が知る限り、本研究が最初である。 3.オーストラリア北西部モンスーン地域に生息するセアカオーストラリアムシクイが協同繁殖を行うことを明らかにした。2004年に観察を行った17群中5群において1個体以上の付加成鳥個体が確認され、少数例ながら、付加個体の存在により、ヒナへの給餌回数が顕著に上昇したことが観察された。調査地域内はなわばりにより埋め尽くされていたが、数個のなわばりが新しく出現するほどの空間は残されていた。また、雌雄ともが付加個体となるがオスの方が多かった。生態的制約のうち、なわばりの不足の影響は少ないが、メスの不足が分散遅延を引き起こしている可能性を示唆している。全ての優位オスは赤黒タイプの羽衣を持ち、羽衣の色が付加オスにとって表現型制約となっていることを示唆していた。付加個体の存在はなわばり防衛には顕著な効果をもたらさなかったが、給餌頻度を高めることで繁殖成功を高めていると思われる。
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