研究課題
基盤研究(B)
本研究の申請者らは、平成9年にインドネシア、ジャワ島パンガンダランのカニクイザル(Macaca fascicularis)の血液から視物質遺伝子の異常を発見した。その後(平成10-13年度)、パンガンダラン地域で再調査を行い、異常な視物質遺伝子を持つサルがパンガンダランの特定の群に集中しており、以前の調査で集められた他地域のサンプルには見つからないことを明らかにした。平成14〜16年度の本研究では、ジャワ島内で、パンガンダランに隣接するワンゴン、パンガンダランから西に位置するソレアル、パンガンダランから東に位置するタワンマングーでカニクイザルの捕獲調査を行った。また、比較のために、タイ南部でも捕獲調査を行った。その結果、ソレアルで吸収波長には殆ど影響しない視物質遺伝子タイプを、タイ南部で中波長(M)視物質遺伝子を多コピーもつ個体を発見した。これらの変異はそれぞれの地域に限局しており、群内では高い頻度で見られた。カニクイザルの遺伝子レベルの研究と平行して、竹中の保有するチンパンジーのDNAサンプルなどを用いて色盲・色弱の検索を行った。その結果、三和化学研究所・熊本霊長類パークのオス・チンパンジー1頭が色弱の原因となるM/Lハイブリッド視物質遺伝子を持つことが判明した。そこで、網膜電図記録、行動実験を行い、この個体が赤欠損型の色覚を持つことを確認した。さらにボゴール農科大学で飼育繁殖した色盲個体、異常視物質遺伝子を持つキャリアのメス、正常個体を対象にカラー・カモフラージュ条件での図形弁別をテストした。その結果、色盲個体が有利であることが明らかになった。比較のために新世界ザルのオマキザル、チンパンジー、ヒトで同様の実験を行い、カラー・カモフラージュ条件では色盲・色弱が有利であることを示した。一連の研究結果は、ヒト以外の旧世界霊長類で色盲・色弱が少ない理由は、淘汰圧だけでは必ずしも説明できず、群れのサイズや移動度の要因が効いている可能性があることを示した。
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