研究課題/領域番号 |
14405020
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
人類学(含生理人類学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (10128308)
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研究分担者 |
後藤 俊二 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (90093343)
田中 洋之 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (20335243)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
7,300千円 (直接経費: 7,300千円)
2003年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2002年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | アジルテナガザル / 亜種分化 / スンダ列島 / 染色体全腕転座 / ミトコンドリアDNA / TSPY遺伝子 / マイクロサテライトDNA / 生物地理学 / Y染色体遺伝子 / 国際研究者交流 / 染色体転座変異 / 増幅DNA断片長多型 |
研究概要 |
本プロジェクトで明らかになったことは下記の点である。 (1)アジルテナガザルで発見された第8・9染色体間の全腕点座(WAT8/9)は、スマトラ亜種群(H.agilis agilisあるいはH.a.unko)に特異的であり、ボルネオ亜種(H.a.albibarbis)には認められない。(2)DNA解析(TSPY遺伝子ならびにミトコンドリアDNA)は、スマトラ亜種群、ボルネオ亜種、ミューラーテナガザルの3集団が各々特異なまとまりを形成すること、さらにボルネオのミューラーテナガザルとアジルテナガザルが異なる時期に少なくとも2度に分かれてスマトラから渡来したことを明らかにした。(3)マイクロサテライトDNAの解析では、スマトラ亜種群、ボルネオ亜種、ミューラーテナガザルの3者間が対立遺伝子の組成において全て異なっており、その異質性の程度はミューラーテナガザルとボルネオ亜種の間で最も大きく、スマトラ亜種群とボルネオ亜種の間で最も小さいことをしめした。(4)分子遺伝学的に最も近いスマトラ亜種群とボルネオ亜種の間で、最も大きい染色体レベルの相違(WAT8/9)が存在することは、両島の隔離後スマトラ集団だけにWAT8/9が発生し、びん首効果から生じた強い遺伝的浮動によってスマトラ内に固定されつつあることが推測される。 今回の成果はスマトラ亜種群、ボルネオ亜種、ミューラーテナガザルの3集団がそれぞれ有意に異なる「進化的に生じた生物多様性の構成単位」(保全する必要のある単位)を保持していることを明確にした。こういったデータの蓄積は、現在論争になりつつあるテナガザル類の分類学的再考にも何らかの示唆を提供するものと思われる。
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