研究概要 |
本報告書は、(1)ドミニカ共和国における成人および小児のデングウイルス特異IgGの分布に関する研究,(2)コンビナトリアル科学を用いたデングウイルス血清型4型に中和活性を有するチンパンジーFabの分離およびヒト型IgG1の産生に関する研究,(3)デングウイルスに中和活性を有するヒトFab抗体の分離に関する研究,の三分野を概括し,いずれも本プロジェクトの一環として成されたものである.サントドミンゴ市におけるデングウイルス(DEN)感染症の浸淫状況を調査すべく,2002年6月同市在住献血者より得た成人血清1008検体,医療機関に来所した10才以下の小児検体201検体について抗DEN特異IgGの保有状況を調査した.成人では98%(987/1008),小児では56%(113/201)が抗DEN特異IgG ELISAに陽性反応を示した.小児症例に関しては1〜2才では0〜5%,3〜6才では25〜65%,7才以上では76〜92%と年齢が進むごとに抗体陽性率は上昇した.中和試験の結果,同市においてはDEN全ての血清型による流行が起こったことが示唆された.我々はDENに感染した高等類人猿のFabライブラリーを作成した.そこからDEN特異単クローン性ヒト型Fabを6クローン分離作成した.そのうちの2つのFabクローンはDENを効果的に中和し(PRNT50:0.24μg/mL),ヒトに使用可能な抗体製剤の可能性があると思われた.サンラザロ病院でDEN感染症回復後ボランティア検体よりヒトFabライブラリーを作成し,DEN各血清型,DEN4NS1,および日本脳炎ウイルスに対するヒト特異Fabを効果的に選別できた.
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