研究課題/領域番号 |
14510063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
美学(含芸術諸学)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永田 靖 大阪大学, 文学研究科, 教授 (80269969)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2003年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 演劇史 / 20世紀演劇 / 近代演劇 / ロシア演劇史 / 20世紀 / 近代 |
研究概要 |
本研究によって、ロシアの劇史学のいくつかの特徴が明確になった。以下にまとめて記しておきたい。まず最初にロシア演劇史は18世紀の中盤に演劇史の始まりを置いている。この時期に、ロシア演劇は芸術的に水準を高めた。'その結果、ロシア演劇史の以後の記述には、芸術的な評価が入り込むことになるが、それは演劇史一般の傾向でもあるだろう。そのために、逆に革命前後に、ロシア演劇史学は新しいパースペクティヴを求めるようになった。例えば、フセボロツキイ=ゲルングロスの『ロシア演劇史』はこの点で際立つものである。ここでは、ゲルングロスは、演劇を単に芸術的な側面ばかりではなく、日常生活の中で演劇を理解しようとしている。同時代のエブレイノフの演劇的本能という理念を借用しつつ、ゲルングロスは宮廷の遊戯や子供の遊びまで、演劇として扱おうとしている。このアプローチは、20世紀のパフォーマンス理論を先取りするものである。 またロシア演劇史は、ナショナル・シアター史観を如実に反映した典型的な例となっている。とりわけソビエト時代に編纂されたソビエト演劇史は、その顕著な例である。ここではソビエト内の各共和国の演劇史が記述されているが、必ずしも民族主義に根ざしたものと言いがたい面もあり、全体としてソビエトのナショナリズムに貢献するものとなっている。ただ、この演劇史を編纂した演劇学者たちは、ソビエトのナショナル・イデオロギーというよりは、ロシアの演劇史記述の伝統にのっとっていることは指摘しておきたい。また演劇史と記憶の問題は、重要な問題である。ここでは、俳優個人の回想が演劇史にどのように記述されているかを検討し、演劇史がいかに個人的な記憶に根ざしているかを明らかにした。 いずれにせよ、演劇史記述は、民族モデル、ジェンダーモデル、またインターカルチュラルな側面からの再考を迫られており、その総体的なパースペクティブを構築することは、今後の課題である。
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