研究課題
基盤研究(C)
本研究では、A.ダントーの「騒乱」(Disturbation)の概念がロマン主義崇高論の現代における展開とその意義を考察する重要な鍵となった。Disturbationとは、ダントーの造語であり、MasturbationとDisturbanceとの両義を含み、Masturbationからは、想像力が身体(現実)を震憾させる力、Disturbanceからは、掻き乱し不安にする働きを継承する。騒乱的な芸術とは、内容的に反社会的、扇情的であるだけでなく、アートと現実との境を突き破る形で見るものを震憾させる、あるいは従来の見るものと芸術との関係を決定的に変更するような作品(パフォーマンス)である。ダントーはこうした芸術はそのディオニュソス祭的な力を再現する試みとみなす。面白いことにこの「騒乱」的な芸術は、否定を介したより高い存在あるいは他者との遭遇という構造を崇高と共有している。こうした「騒乱」と崇高の構造的な一致は、崇高美が太古に起源を持ち、古代以来美と並んで、制御された形態を突き破る人間の根元的な欲求を表現してきたと考えられる。したがって、崇高美は現代におけるパフォーマンス、またパフォーマンス的な働きを求める芸術と通底し、ロマン主義の時代に制限されないアクチュアリティーを持ち続けている。さらに、彩色(Kolorit)がデッサンに対する比重を増し始めたのは、ロマン主義の時代であるが、空間への広がりを潜在的に内包する風景画の登場と不可分な関係にある。またその色彩の概念は、色彩を光のメタモルフォーゼとみなし、固体化に抗する傾向を内包している。歴史画や人物画から風景画への転換は、形態美を規範とする芸術概念から非言語的(感性的)、「脱概念」的、空間的な芸術への移行を示している。彩色論、無形、パフォーマンスはロマン主義の崇高概念と重なり、現代芸術に様々な崇高概念の実践を認めることができる。
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