研究概要 |
急性ストレスに対する免疫応答についての基礎的知見を得るため,暗算課題,冷却昇圧課題を負荷して各種免疫細胞の末梢循環数を解析した結果,自律神経系の亢進と共に,NK細胞などの細胞性免疫の亢進,T細胞,B細胞などの液性免疫の抑制という二相的反応が頑健に観察された(Isowa, Ohira, & Murashima,2004).さらに,これらの反応は,遅くとも2分以内には生起する極めて鋭敏なものであること,NK細胞の反応はT細胞やB細胞の反応よりも早いこと,などが確認された(Kimura, Isowa, Ohira, & Murashima, in press.). これらの知見を基に,ストレス課題におけるコントロール可能性を操作して,それが免疫動態に及ぼす効果を検討した.その結果,コントロール不能な事態では自律神経系の亢進がいくぶん抑制されると共に,自律神経系活動と免疫反応の対応がきわめて高くなることが示された(Isowa, Ohira, & Murashima, in press.).これは,事態がコントロール不能であると認識されると中枢によるトップ・ダウン的制御が働いて,環境に適応するために自律神経系を介して免疫系を積極的に制御しようとする機構の現われであると解釈された.
|