研究概要 |
本研究では,生活環境における音と映像の協和感に着目し,音と映像の印象の相互作用を検討することを目的とした。 刺激として,我々が日常生活で遭遇すると思われる環境(音と映像)を8種類選んだ。被験者10人に対し音と映像を同時に呈示して,音あるいは映像の印象(13種類),および音と映像の協和感「合っている-合っていない」,音と映像から成る環境への満足度「満足-不満足」を7段階のSD尺度で評定させた。評定結果を集計し,因子分析を行ったところ,2つの因子,すなわち美的因子,迫力因子が抽出された。 続いて,音および映像における印象の相互依存関係を検討するために,共分散構造分析を行った。因子分析によって得られた各因子の因子得点と協和感の評定値との間に双方向のパスをもつ構造方程式を構築し,解析したところ,適合性の高いモデルが得られた。そのモデルを解釈したところ,音と映像の協和感は,音の印象との間で因果関係(直接効果)をもっている可能性が示唆された。すなわち,音の美的感が高くなれば協和感が高くなり,さらに協和感が高くなれば,音の迫力感が低くなることが示唆された。よって,生活環境において,音と映像の組み合わせが適切であるかどうかという判断は,音が大きな要因になっていると考えられた。 さらに,環境への満足度を考慮して,同様に共分散構造分析を行った結果,先のモデルで得られた直接効果以外に,満足度と音の印象との間にも因果関係が見られた。すなわち,音の美的感が高くなれば満足度が高くなり,一方,音の迫力感が低くなれば満足度が高くなることが示唆された。
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