研究概要 |
Microsleepは精神活動中に唐突に侵入し重大な事故を引き起こす。本研究は,microsleepの発現様式を生理心理学的に解明し,判定基準の作成を試みた。Microsleepの行動的表出を実験的に定めるため,被験者ペースの交代式tap運動(間隔1秒の見積もり,感圧センサースイッチ押し10回,左右の手の切り替えによる運動継続)を課した。ディジタル型睡眠ポリグラフによりtap,眼球運動,脳波の時系列データを収集し,tap最大荷重圧と緩徐眼球運動の自動計測(移動式直線回帰分析法)および脳波パワスペクトルの推定(最大エントロピー法)を行った。 Microsleepの行動的表出: 左右の手の切り替えを基準にtap列を抽出し,列内のtap数に応じて標準・中断・過剰・脱落の4類型に分けた。Tap列の出現分布より,microsleepの行動的表出を示唆する一定状態を見出した。それは4類型のtap列の混在,多様な誤動作パタンの不断の侵入とその修復によって運動自体を継続するという特徴をみせた。 Microsleepの生理的表出: 行動生理データtap列単位で読み取り,tap-by-tap分析を施した。tap運動の荷重圧減弱あるいはタイミングの乱れ(tap間隔の延長・短縮,手の切り替え時間延長)が生じる直前の数秒間は,脳波のα帯域において優勢周波数が消失しパワ比(α/θとα/β)が減少した。その変化の多くは緩徐眼球運動の出現を伴った。tap運動の見かけ上の遂行中に入眠状態に類した低い覚醒水準が発生する瞬間を取り出すことができた。 Microsleepの判定基準: tap運動の強さ(荷重圧)は正しい運動(標準tap列)の半分以下に減少する。タイミング(tap間隔)は重要であるが,変動幅が小さい。脳波α/θパワ比は中心部で1,後頭部で4に落ちる。緩徐眼球運動は1つ以上の出現が判定の目安となる。
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