研究概要 |
被験者自身が,不適切な文脈においてその文脈の不適切性を修正する活動が,記憶に対して促進的な効果をもつかどうかを検討し,以下のことが明らかになった。 1.被験者自身が記銘語を含む文脈を修正するための情報を生成する条件(生成修正)は,不適切文脈が呈示されるのみの条件(呈示),及びはじめから適切文脈になる情報を生成する条件(生成)よりも記銘語の再生率を高める。これを自己修正精緻化効果と呼ぶ。 2.自己修正精緻化効果は,記銘語と不適切な文脈が呈示された際に,奇異イメージによって,記銘語の差異性が高まること(奇異性効果),及び適切な修正語を生成することによって記銘語が認知構造に統合されること(適合性効果)の加算的効果によって生じる。ただし,修正語を生成するだけでこの効果が出現する場合もある。 3.自己修正精緻化の有効性は,以下の要因によって規定される。 (1)修正の対象(記銘語,枠組み文中の語) 大人が被験者である場合,自己修正精緻化効果は,記銘語を修正する際に出現する。というのは,記銘語に対する修正語が,記銘語の有効な検索手がかりとなるからである。 (2)イメージの有無 文脈がイメージを喚起しない場合には,自己修正精緻化効果は出現しない。というのは,奇異イメージによる奇異性効果がないことになるので,適合性効果のみの効果だけが反映されるからである。 (3)呈示形式(集中呈示,分散呈示) 分散呈示によってより自己修正精緻化の有効性は促進されるが,集中呈示であっても奇異イメージが喚起される場合には,そのイメージが記銘語の有効な検索手がかりとなり,記憶成績が促進される。 (4)年齢 枠組み文を修正する場合には,小学2年生では自己修正精緻化効果がなく,6年生でその効果が出現する。というのは,知識が豊富になり,修正語を記銘語の検索に効果的に利用できるからである。
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