研究概要 |
発達障害児の心の理解についての検討を行った。Baron-Cohenら(1985)とHappe(1994)を参考に,心の理解課題を作成し(花熊ら,2002),健常児(小学校1-3年生)や軽度発達障害児(小学校1年生-中学校3年生)に実施した。課題の物語を聞かせ登場人物の行動予測や言動の真偽を判断させ,なぜそう思うかの理由を回答させた。行動予測や言動の真偽の判断のような択一的な課題については健常児と軽度発達障害児との間には差は見られなかった。しかし,行動予測や真偽判断の理由については健常児と軽度発達障害児との間で差が見られた。特に高機能広汎性発達障害(以下,高機能PDD)児においては,健常児とは異なる回答が見られた。 一方,知的障害養護学校中学部に在籍する軽度知的障害を伴う自閉性障害児の社会的行動と心の理解の発達について縦断的な検討を行った。授業の中で劇指導を行った。劇の中では,他者の視線を意識する活動,感情表現を豊かにする活動を行った。他者の視線を意識した行動がみられるようになっただけでなく,パートナーに対する自発的な援助行動もみられるようになった。また,状況による表情の弁別をさせたり,感情表現の上手な生徒の演技を注目させたりすることによって,対象児の感情表現が豊かになっていった。日常生活場面においても自発的な社会的行動・向社会的行動が観察されるようになった。1次の誤信念課題を3課題5試行を行ったところ,1課題で通過した。さらに課題内容の確認を行ったところ,もう1課題でも正解した。以上のように社会的行動と心の理解に発達がみられた。
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