研究概要 |
本研究の主な目的は,感覚運動的思考の段階にある幼児期の子どもの思考と動作のリズム性を明らかにし,それらをベースに他者と相互作用しながら築いていく関係のあり様を認知と情動の2つの側面から明らかにすることである。本研究は2つの領域に分けて,合計7つの実験から構成されている。領域の1つは,感覚運動的特徴と認知的(操作的)特徴を備えた課題を用意し,その課題のリズム構造を子ども自身がどのように把握していくかその発達的変化について検討するものであり,他の1つは,子どもにとって身近な子ども同士で教え-学び合う場面に注目し,本人の思考や動作に現れるリズムやテンポといったものが,どのように教授-学習場面に影響するのかという問題について,教授者の教授方略の分析を試みる。各実験の内容は以下の通りである。実験1では,幼児の思考に現れるリズム制御の発達について,知覚・行為レベルでのリズム再生から概念・表象レベルでのリズム操作に至るまでの課題解決行為に注目し検討した。実験2では,感覚運動要素からなるリズム構造を用いて,実験者から提示されたモデルに対して,身体運動の表出プロセスと思考の表出プロセスを比較した。実験3では,人が自らの身体とその動作を通して作り出す模倣の意味について吟味・検討した。実験4では,リズム要素を自らの行為を通して表現することが概念・表象レベルでの理解にどのような影響を及ぼすのか検討した。実験5では,折り紙構成課題を用いて,大人からの足場作りに支えられた子ども自身の自己教示の効果について折り紙課題の操作のリズム的関係を踏まえて検討した。実験6では,折り紙構成課題を用いて子ども同士が教え-学びあう教授-学習場面を設定し,教授者(年長児)の教授方略について検討した。実験7では,折り紙構成課題を用いた教授-学習場面での教授者の教授方略に見られる認知-情動的制御について検討した。
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