研究概要 |
本研究は,これまでの臨床実践の中で得られた報告夢(採取夢)のデータベースを作成し,それを活用した夢分析による心理療法の研究を目的とするものである. 夢分析の中でクライエントから報告される夢の種類は実に多岐にわたるが,それらをデータベース化するにあたり,「検索語(303項目)」の検討および選定が最初に行われた.そして,その検索語に基づいて,1)夢に示された心理療法(21項目),2)夢分析(13項目),3)夢に示されたこころの世界(35項目),4)夢の中での動作・行動・感情(77項目),5)夢の中の人物・人間・存在(52項目),6)夢の中の動物(24項目),7)夢の中の自然・物体・場所など(28項目),8)夢に現れた元型・元型的な力(18項目),9)夢の仕事・夢の作業(35項目)の観点から,報告夢を整理・分類するためのチェックリストが作成され,パーソナルコンピュータを利用したデータベースの作成が行われた. 次に,作成されたデータベースを活用して,さまざまな夢分析による心理療法の研究が試みられ,その研究のひとつとして,特にある一人のクライエントの夢資料が分析され,心理療法の進展プロセスについての分析心理学的な考察が行われた.その結果,夢分析による心理療法のプロセスが,1)助け手に出会う,2)安心して委ねられる,3)傷つきを共感的に理解され受け容れられる,4)抑圧されてきた無意識の感情や観念に気づく,5)"母なるもの"・"父なるもの"の支配と向き合う,6)目を背けてきた自身の"影"に直面する,7)死を体験する,8)死を潜り抜け再生する,9)内なる自己治癒力を見出す,10)人間としての限界を自覚する,11)超越的なものの働きを知らされる,12)自分固有の"物語"を発見する,といったクライエントの12の内的経験(ステージ)を経て,セラピストの共時的な体験とも関係しながら,螺旋的に少しずつ進展していくことが明らかにされた.
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